鬼頭勇大

日本企業に顕著な傾向として「上司への信頼性の低さ」も挙げられた。10カ国全体で、「自身の上司よりロボットを信頼する従業員」の割合は64%だったのに対し、日本では76%。岩本特任教授は、産業構造の変化に人事制度がついていけなかったことを理由に挙げる。「大量生産、大量消費の時代には、経験や勘に頼る部分も大きく、年功序列がある程度機能していた。しかし、効率化が重視されるようになる中で、マネジメントにも勘に頼らない合理性が必要となってきている。これまでの年功序列式のマネジャーでは、現場との距離が生まれている」と岩本特任教授。「データで見ると、年功序列の効率が悪いと分かることがほとんど。その一方で、データを基に効率化すると困る人がAI導入や制度改革に抵抗している」とも指摘する。 今回の発表では、AIの導入が進まないのが単にテクノロジーの問題ではなく、日本企業の構造的な問題も絡んでいることが浮き彫りになった。一部の大手企業では、労組と協調して年功序列の段階的な変更を実行しているケースが出始めてきたが、世界基準のAI導入にはまだまだ時間がかかりそうだ。